著書である鹿内幸四朗さんのセミナーにより知ったのは「成年後見制度」の問題点。まさかこういう制度だったとは…。

その中身をかいつまんでご紹介すると…

  • 成年後見制度は、認知症になった高齢者が、だまされて財産をとられたり使い込まれたりしないために創設された制度。知的障害等により「判断能力(事理弁識能力というらしい)がない」とされると、障がい者も後見の対象となる。
  • 後見人に支払う報酬は、財産の額によっては年間数十万円を超えることもある。特に、後見が長期にわたる(若い)障がい者の場合、高額になる可能性が高い。
  • 認知症により徐々に判断能力が衰えていく高齢者と異なり、先天的に判断能力に欠けるとされた知的障がい者においては、それまで親権に基づき子に代わって親が行ってきた行為が、子供が成人したとたんに親が行うことができなくなってしまう。例えば、子供名義の預金からお金を払い戻すことは「本人ではない」という理由で銀行に拒絶される。
  • 後見人は本人(=被後見人)の通帳や印鑑、不動産の権利証等すべての財産を預かり管理する。後見人が「贅沢」「無駄」と判断すれば、家族はおろか、本人も自分のお金を自分のために使うことはできなくなる。
  • 法定後見人に誰がなるかは、家庭裁判所が決める(法定後見)。
  • 法定後見において、家族が後見人に選ばれる確率は2割以下。選ばれた後見人が、家族の思いにそった人であるかどうかはわからず「あたりはずれ」がある。

※「はずれ」の例として、本書の中では「パーマをかける」「スーパー銭湯に通う」ことを贅沢であると拒否された事例を挙げている。

この本には、子供のことをもっとも理解し、幸せを願っている親が、後見人になれないという理不尽な現実に対し、「子供を守る権利を絶対に渡さない」と、立ち上がった鹿内さんが、駆けずり回って調べ、実践してきたノウハウが詰まっています。

その核心は、「親心後見」と名付けられた「公証役場での任意後見契約」。

(親権がある)未成年のうちに、公証役場で「任意後見契約」を結んでおく。夫婦たすき掛けで、父親が子供の代理人となり母親を後見人に指名、と同時にその逆パターンでも指名することにより、夫婦のどちらかが生きているうちは、親が後見人になることができる。

その他、当事者の実情に合わせた対策、例えば「家族信託」「親心遺言、予備的遺言」等に始まり、「通帳、マイナンバーカード、印鑑登録証明書の作成」といった細かなことまで、丁寧に説明されています。

驚くべきことに国連障害者権利委員会は、2019年10月に日本政府に対し、成年後見制度を含む「障害者の権利」に関する勧告を実施しています。障がい者に代わりに誰かが意思決定することや、知的障害がある人の法的能力の制限を認めている、現在の法制度を強く懸念しているのです。

鹿内さんが「変えられないもの」としてきた「法律」が一日も早くあるべき形に改正されることを願います。

(参考リンク)

障害のある子が「親なき後」も幸せに暮らせる本

鹿内先生webセミナー申し込み

「18歳成人と知的障がい者の『親なき後問題』」日本記者クラブ記者会見動画

障害者の権利に関する条約に基づく国連勧告(外務省仮訳)

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