【中小企業は補助金好き?】

はじめに断っておきたいが、ここで述べることは、「往々にしてありがち」ということで、例外は多数あることを前提にお読み願いたい。

中小企業診断士になって思うのは、中小企業相手に報酬を得ることの難しさだ。特に、(本来支援が必要な)経営環境が厳しい企業ほど、「ない袖は振れない」状態で、「コンサルタント料を支払ってまで支援はいらない」となり勝ちである。税理士や社労士のように、会社にとって不可避の業務を委託する訳でもないので、後回しになるのもうなずける。

企業の顧問や役員としてかかわっている人を除けば、直接的な企業支援というよりは、セミナーや公的機関からの委託業務等を収入源にしているケースも多い。

そんな中で、かなりの確度で企業から直接報酬を得る機会が「補助金」である。「ない袖は振れない」会社も、補助金という「現ナマ」が入れば、そこから一定の報酬を支払うことに抵抗感は少ない。実際、コロナ禍が契機となり、事業再構築補助金を中心とする「補助金バブル」ともいえる現象があった。

【補助金は、投資への誘導】

そもそも「補助金」とは何なのか?

補助金とは「投資」をしたときに、投資資金の一部を「補助」する制度だ。こんなふうに考えるとわかりやすい。

10億円を投資すると、毎年1億円のリターンを得られる投資案件があるとする。どうだろう、多くの企業が投資したいと考えるのではないだろうか。

では、20億円の投資で、毎年1億円のリターンの案件だとするとどうだろう?リスクの度合いにもよるが、投資する企業は大きく減るだろう。

しかし、国としては投資してほしい。その時に、「10億円の補助金を出すから投資しなさいよ」と補助金を餌に勧誘する。補助金とはそういう性格のものだ。

工場を建てて雇用を増やしてほしい、新しい事業に取り組んでほしい、従業員の給与をあげてほしい…国(や自治体)の政策目標を実現することを目指すための「餌」、表現がよくなければ「道具」が補助金なのだ。

しかし、冷静になってもらいたい。10億円の補助金をもらって20億円の投資をする、リターンは1億円。1億円のリターンを継続的に得られるかというリスクは、変わらないのだ。「10億円もらったぞ」喜んでいる場合ではない。

そもそも10億円の補助金が出るということは、「それだけ困難な事業だが、国としては取り組んでほしい」という意味なのだ。

ならば、その先のリスクをコントロールしつつ、リターンを継続的に上げていくか、ということが最重要であることは、火を見るより明らかである。そして、そのためのノウハウや情報を提供し、実行支援を行うのが経営コンサルタントなのだ。

ツールとしての補助金は大いに利用すべきだが、それをゴールにするようなコンサルタントに私はなりたくない。

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